2024年9月8日
エトセンス(ETHOSENS)のタグには、ブランドのシンボルとして白い菱形が刺繍されている。そして2015-16年秋冬コレクションのテーマとなった「white rhombus」もまた、“白い菱形”を意...

エトセンス(ETHOSENS)のタグには、ブランドのシンボルとして白い菱形が刺繍されているそして2015-16年秋冬コレクションのテーマとなった「white rhombus」もまた、“白い菱形”を意味する言葉だブランドのアイデンティティとはいったい何だろうブランドスタートから8年が経ち、改めて発したデザイナー橋本の問いが、今季のテーマには重ねられている

問いだけで終わるのではなく、ひとつの答えにたどり着いたことから、コレクションは出来上がっていった答えのヒントとなったのは“線”だ一般に、曲線は柔らかさを持ち、一方で直線は無機的な印象を与えることが多いしかしエトセンスのアイデンティティとは、このどちらでもない“柔らかな直線”だったという言い換えるなら、直線的なカッティングやシルエットで、柔らかなムードを作り出すこと

コレクションを見渡してみると、ゆったりとしたシルエットが目立つそしてそれが、まっすぐに引かれたパターンの結果だと気づくのに、そう時間はかからないだろうコートにジャケット、シャツ、パンツよく見ると、そのどれもが裾へと一直線に伸びるラインを描いているしかしながらそれは、身体にまとわれた瞬間にはらり、ドレープ感や落ち感が現れることで、柔らかなムードへと表情を変えるのだそれだけではない細番手のウールを用いてさらなる柔らかさを加えたり、逆にパリっとしたタキシード素材でギャップを持たせたりと、素材へのアプローチが多様であることも、コレクションに心地よい違和感を生んでいる

 

そしてブランドが得意としている、ギミックを効かせたデザインも健在だったトップスに施されたのは、菱形を傾けた形、つまり正方形で形作られた編み込みその編み込みはグラフィック化され、シャツにも切り替えとして落とし込まれるさらには、長さ太さの異なる2本をドッキングさせたパンツも登場するなど、シンプルな中にもユーモアを感じさせた

モダンで直線的なデザイン性と、中性的でソフトなムードこれまであまり注目されてこなかった隙間、つまりこの2つの隙間を、エトセンスは確かに埋めているような気がするミニマルなデザインにこだわりつつ、独自の存在感を放っていたのもまた、これが理由なのだろう今回コレクションを通じて探し求めた、ブランドの輪郭その答えが“柔らかな直線”だったのだとしたら、こんなに優しいレトリックはない